設計・生産の速度が4倍になったら

目次

(1)製品開発力のランチェスター公式
(2)デルモデルの秘密

(1)製品開発力のランチェスター公式
2次世界大戦では、戦力増強のための資源配分問題の研究に多くの科学者が動員されてオペレーションズリサーチORと呼ぶ成果をあげました。たとえば、「空襲を防衛するためにレーダーをどのように配置し、防空戦闘機隊をどのように運用するか」、「戦略爆撃機B29と前線用の戦車の生産に資材をどのように配分するか」などの多くの成功事例を連合軍側にもたらしました。

そのORで公式化された多くの理論の一つに「ランチェスター戦略モデル式」があります。ランチェスターは英国人で、自動車用ガソリンエンジンの開発等で有名なエンジニアです。第一次世界大戦の後、戦闘機の空中戦に関心を持って研究を行ったところ、一騎打ちの場合(第1公式)と複数が入り乱れて戦う場合(第2公式)で損害量が科学的に説明できることを発見しました。米国国防省内のORチームの科学者達がこのランチェスター第2公式に着目し、兵器の開発と補給の概念を追加して戦力増強のゲーム理論に発展させました。

ランチェスター第2公式は、たとえば同等の技量の10機と8機の戦闘機が空中戦を行いどちらかが全滅するまで戦うと仮定した場合、数の多い(10機)側が勝ち、4機の損害で敵の8機を全滅させる結果となることを証明します。この公式は、トップシェアを持つ企業が最終的には2位以下の企業の市場占有率を侵食して寡占状態になることを見事に説明しています。

ランチェスター第2公式は「戦力=武器効率×(兵力)**2」と表わされ、兵力が二乗で作用します。これを製品開発力に適用すると、
  
製品開発力=開発生産性×(開発製品数)**
と公式化できると考えられます。開発期間を短縮できれば、開発生産性を向上させ、開発製品数を増加させて、競合他社に対して開発力を増強できます。

たとえば、
A社が開発期間を1/2にできて市場への製品投入を2倍にできれば、競合他社に対して製品開発力を2×(2)**28倍に増強したことになります。これがB社では開発期間を1/2にできても市場への製品投入が1.5倍であれば、2*(1.5)24.5倍にしか開発力は向上できず、B社はA社に市場での製品開発力で大きく劣ることになります。製品開発のランチェスター公式から、経営トップが要求する「開発期間短縮による製品数増加」が重大な経営戦略を意味していることが判ります。

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(2)デルモデルの秘密
米国のデルコンピュータ社はインターネットを活用したパソコン直販ビジネスの成功例(デルモデル)として有名です。しかしながら、どの解説本からも経営上の儲け続けるための仕組みは隠されています。その仕組みは極めて単純なもので、”入金−出金=キャッシュフロー>0”の公式で表せます。

デルコンピュータ社が儲け続けている理由は、製品開発を短期間で行い、インターネットを通じた顧客からの受注生産BTOで製品在庫を持たず、顧客からの入金が先で社外への支払が後という仕組みを構築しているためです。単なるインターネットを使った直販だけであれば、書籍通販で有名な米国アマゾン.コム社のように膨大な赤字事業となってしまいます。

パソコンの製品開発は、回路設計面では高度な技術力(特に半導体技術)が必要ですが、実装・生産技術面でみれば実装設計や製造をアウトソーシング化できる成熟技術段階にあり、大学の経営学部の授業でパソコンの設計・組立を体験できる例もある位に容易になっています。

デルの公式から、製品開発期間を短縮し、「入金が先、出金が後」の仕組みをぜひ構築していただきたいと考えます。
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